2002年、中江裕司監督作品。
原作は仲宗根みいこの同名漫画。
目次
『ホテル・ハイビスカス』のあらすじ
ホテル・ハイビスカスは一泊四千円のところ、今なら沖縄料理付きで三千円。でもお客さんが泊まれる部屋はひとつしかない。
ホテルを営んでいるのは腕白でお転婆、なんとも型破りな小学校3年生の少女・美恵子をはじめ、バーで働きながら一家を支えている美人の母ちゃん、三線(さんしん)とビリヤードが得意な父ちゃん、黒人とのハーフのケンジにぃにぃ、白人とのハーフのサチコねぇねぇ、そしてくわえタバコのおばぁ、なんとも”インタァナソナル”、な顔ぶれだ。
美恵子は今日も忙しい。同じクラスの親友ガッパイとミンタマーを引き連れて、森の精霊キジムナーを探すのだ。
そんな学校の帰り道、美恵子らは行き倒れの青年を発見し、ホテルに運んでやることにした。青年の名は能登島。
彼もその日をきっかけにホテル・ハイビスカスの泊まり客として、美恵子ら家族の一員となった。
引用元:ホテル・ハイビスカス公式サイト
『ホテル・ハイビスカス』の感想(ネタバレ注意)
主人公の小学生、美恵子がとにかく元気な映画!
映画館で他の映画を見た時の予告でこの映画を知ったのだけど、すっごいインパクトで「これは見なくては!」と思いDVD買っちゃいました。
もう何度も繰り返し見ている映画です。大好き!
一本の映画にお話がいくつか入っているような形式だけど、不思議と一つの物語を見たような感じがします。
以下ネタバレになるのでご注意くださいね。
はじまり・フェンス
元気すぎる小学生美恵子(蔵下 穂波)が友人のガッパイ、ミンタマーと共に下校していると、男性が一人行き倒れになっています。
スーパーのカートに青年を乗せて、美恵子は友人らと共に運び、家であるホテル・ハイビスカスに運びます。
もうこの冒頭のシーンにこの映画の要素すべてが詰まっている感じ。カートに青年を乗せた美恵子はなぜか自分も一緒に乗り、友人二人に押させて家に着いたら「お客さん連れてきたよー!」と叫ぶんです。
青年を介抱したのかと思ったらお客さんにしちゃった!たくましすぎる美恵子。
行き倒れの青年は能登島(和田聰宏)といい、彼の目から見た物語が展開されるのかな、と思えばそうではなく、ホテル・ハイビスカスが出てくるとっかかりになるだけでした^^;
名前こそ「ホテル」だけど、普通の家の一室に泊めるだけなので、いわゆる民宿です。そこの家族がなんとも個性的!
沖縄らしくお母さん(余貴美子)がよく働いて家も切り盛りし、お父さん(照屋政雄)はホテル(?)併設のビリヤード場をのんびりと営み(寝てるだけ)、元気なおばあちゃん(平良とみ),黒人とのハーフのケンジにぃにぃ(ネスミス)、白人とのハーフのサチコねぇねぇ(亀島奈津樹)と賑やかに暮らしています。
ケンジ、サチコを見ると明らかに複雑そうな家庭なんだけど、そこは触れず、お父さんが能登島に「うちはインタァナソナルだけど」と言うのがいい!
ケンジとサチコがハーフなところを見ると今のお父さんの子との間にできた子じゃないから、お母さんの連れ子で今のお父さんと結婚したことがわかるけど、その辺りは深く語られず、みんな仲良く明るいのです。
子供独特の面白い行動が可愛くておかしい!
ある時美恵子は冒頭にも出てきたガッパイとミンタマーと共に、ここから先は進入禁止というフェンスに向かうのだけど、その時歌っている歌が「ABCの海岸で~」というきらきら星の替え歌。
この替え歌知ってますか?ザ・小学生な感じがたまりません。気になる方は歌詞を検索してみて下さい(^m^)
元気よくフェンスに向かい、そこは沖縄らしく米軍の領地のため進入禁止なのだけど、美恵子たちは越えて入ってしまいます。
そこには死んだネコの皮を剥いで食べると噂される老婆「まやー食いおばぁ」が住んでいます。自分たちも食べられるのでは!と怯えますが、もちろんそんなのはウソで、美恵子たちにお茶を出してくれました。
敷地を出ようとすると米兵に見つかりホールドアップされる子供たち。もちろん、無害な子供たちなので、大事にはならず車で送ってもらいます。
車中の会話がまたおかしくて、送ってくれる米兵が珍しく「この人キジムナーじゃないのか」なんて言い出す子供が彼に名前を尋ねると「King Junior!」と応えます。
英語がわからない子供たちは「ほら、やっぱりキジムナーだ!」と言います。日本人じゃないというだけで森の妖精キジムナーにされてしまう米兵^^;
その頃、ケンジの実の父から手紙が届き、米兵である父親が任務で日本に来るから会いたいとのこと。肝心のケンジ以外の家族総出で出迎えます。
この時のお父さんが可愛いです!ハゲのお父さんは「きちんとした格好」をした上にカツラを被ってるんです。でも、ケンジの父に挨拶して深々とお辞儀した途端、そのカツラが落ちてしまい、風で舞うカツラを美恵子が追いかける、というなんともユーモラスなシーンがあります。
お母さんの前夫に堂々と会うというのもよく考えれば不思議だけれど、そんなことを微塵も感じさせない明るさです。
ケンジの父に対面した美恵子は「キジムナー!」と言います。車で送ってくれた米兵でした。
ケンジは父親に対して複雑な思いがあるらしく、会いに行かないのですが、ボクシングをしているケンジがマラソンをしていると、父親が車で追いついて並走するという場面があります。
昔、任務で沖縄に来ていた父親とお母さんとの間に生まれたのがケンジなんだろう、ということが想像できるけれど、詳細は語られません。
その後家に出たヤモリに美恵子がキジムナーという名前をつけます。ケンジは美恵子に微笑みます。本当は、父親にもそういう笑顔で接したかったんだろうなぁ、とジーンときました。
てぃーだ母ちゃん
「てぃーだ」とは「太陽」です。太陽みたいにいつも明るく家族を照らすお母さん。
洗濯機が壊れたってへっちゃら。屋上で泡だらけで洗濯物を踏み、笑顔ではしゃぎます。
そんなお母さん、サチコに「お父さんに会いに行こう」と提案します。でも、問題は美恵子。着いて行きたい、と言うかもしれません。
そこで、ホテル・ハイビスカスの31周年と3カ月と3日目の創立記念日パーティが開催されます。
どー考えても無理クリな中途半端な記念日。何かありそうですね( ̄ー ̄)ニヤリ
一応パーティらしくカラオケが始まります。ケンジにぃに、歌うますぎ!と思ったところで彼がネスミスだと気づきました。遅すぎ^^;
そして、メインの大抽選会が催されます。
お父さんには泡盛1年分、おばぁちゃんにはお線香1年分、美恵子は全自動洗濯機を当てました!壊れたところだからよかったね!って自分たちで負担してるけど(・∀・)
そしてお母さんには、アメリカペア旅行のチケット!当たったんだから仕方ない、サチコのお父さんに会ってくるか~、という流れ(^^)
美恵子がくじを引く時、本当はもう一つの紙(アメリカ旅行)を引こうとしたんです。でも、能登島が離さないからさ~、仕方ないよね♪~(´ε` )
そんなわけでサチコとお母さんはアメリカに旅立ちました。
美恵子の大冒険
アメリカに行ったお母さんは、美恵子にでーっかい目覚まし時計を送ってきました。これで一人で起きられるね!
それから手紙も入っていてお父さんに見せたいけれど、お父さんはパイナップルの収穫のお手伝いに行っていて、他のみんなも留守。
美恵子は一人でランドセルをしょって届けに行くことにしました。
途中、同じくらいの年の子たちに混ざってかくれんぼうをしたら見つけてもらえずに夕方になってしまったり、山に行ったらツリーハウスに住むおじいさんに出会い、キジムナーと一緒に歌を歌ったり。今度は本物のキジムナーでした。よかったね!
このキジムナーのシーン、沖縄らしいなんともいえないファンタジックなシーンで好きです(^^)
ツリーハウスで一晩過ごし、翌日やっと畑に着いたと思ったら入れ違いでお父さんは帰っていました。残念だけど、大冒険だったね!
『ホテル・ハイビスカス』のラスト・結末
お盆になってもお母さんとサチコは帰ってこない。同級生に「離婚したんだ」とからかわれ、美恵子はその子に石を投げてしまう。
いつもは温厚なお父さんが怒ります。「そういうことが大きくなると戦争になるんだ」と。
沖縄の人が言うとなんだかしんみりしてしまいます。この映画で唯一シリアスなシーンです。
怒られた美恵子は公園のブランコに行きます。タエコという美恵子にそっくりな女の子がいて、一緒に遊びます。
やがてお父さんが迎えにやってきました。もう怒っていません。お父さんとお母さんはお互いに好きだから大丈夫だよ、大事な思いはちゃんと言葉にしなくても伝わっている、と言います。
安心したのか、美恵子は父の背中で寝てしまいました。でも、家に着いても目を覚ましません。
「マブイ(魂)が落ちている」というおばあちゃんの言葉に一同慌てて美恵子のマブイを探しに行きます。なんでも、犬とか猫に食べられてしまったら大変、とか。
一人になった美恵子の元に公園で会ったタエコが現れ、果物をくれます。美恵子は目を覚ましました。タエコは子供のころに亡くなったお父さんの妹でした。
ご先祖様が戻ってくるお盆です。タエコは美恵子のマブイを届けてくれたんですね。
お母さんとサチコが帰ってくる日が来ました。美恵子は張り切って飛び切り大きな横断幕を作ると、ホテル・ハイビスカスからそれを垂らして、満面の笑みで二人を迎えました。
まとめ
エネルギーの塊みたいな美恵子から目を離せませんでした!
美恵子演じる蔵下穂波ちゃんはインタビューで「素だったからできた」と言っていましたが、あれが素だったらすごすぎる!
当時8歳だった彼女も、もう成人しているんですね。現在の作品も見てみたいなぁ。
途中にユーモラスなシーンがあったのだけど、どのあたりだったか忘れてしまい、書けなかったことがあります。
ケンジはボクシングをしているのだけど、お父さんがいるビリヤード場にやってきて「プロボクサーになりたい」みたいなことを言います。
お父さんはケンジを応援するのだけど、その言葉が
「ケンジ、チャンポンになれ!」(^o^)
終始こんな感じのほのぼのした映画でした。
家族でも楽しんで見られる映画だと思います。オススメです!
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