2010公開、監督は吉田大八。
原作は西原理恵子の同名漫画。
2017年6月、脚本・演出、加藤拓也により舞台化。
『パーマネント野ばら』のあらすじ
とある地方の港町。離婚したなおこ(菅野美穂)が娘モモを連れて帰ってきた。
実家はなおこの母まさ子(夏木マリ)が営む美容院、パーマネント野ばら。常連のおばちゃんたちがいつも下ネタを飛ばして盛り上がっている。
なおこの幼馴染のみっちゃん(小池栄子)、ともちゃん(池脇千鶴)、母まさ子も皆男運が悪いけれど、明るく暮らしてきた。
なおこは中学校の教師カシマ(江口洋介)と密かに付き合っている。
『パーマネント野ばら』の感想(ネタバレ注意)
原作を読んで号泣(T_T)
西原理恵子さんの漫画を初めてちゃんと読みました。絵のテイストに反して(失礼!)描写がすごく繊細。
強烈な登場人物が多く、描かれるエピソードもすごい!でもそれぞれが抱える思いはすごくデリケートだったりするのです。
そんな漫画が映画化されていると知って見てみました。
登場するキャラクターがみんな良くて、しかもそれを演じる女優さんたちが素晴らしい!
特になおこの幼馴染みっちゃん演じる小池栄子さん、よかった!
原作はもっとオバサンぽいけど、映画だと「擦れっ枯らしだけどいい女」な感じを好演しています。手に魚を下げてたって格好いいですよ(^q^)
みっちゃんはフィリピンパブを経営していて、旦那さんは浮気者で、浮気相手を車で轢こうとして旦那を轢いてしまい、自分も電信柱に激突して二人とも血まみれで入院します。
なかなか激しい性格です^^;
でも、旦那さんを思う気持ちがなんだか切ない。結局離婚してしまいますが。
それから、夏木マリさん!大好き!こんなパンチパーマしてたって格好いいです。
原作は「パーマ屋のお母さん」という感じでおばちゃんぽいけれど、映画では強烈なおばちゃんたちが集まるパーマ屋さんの中のボスっぽい感じです。
なおこの父親はどうしようもない人だったらけれど、再婚した旦那さん(宇崎竜童)はナス農家の女性と不倫して家に帰ってこない。これまたどうしようもない。
こんな感じで、出てくる女性たちはみんな男運がないです。でも、いつも恋の話(というか下ネタだけど)をしている。結婚前の女性ならわかるけど、いい年したおばちゃんたちですよ!
でもまぁ、いくつになったって、恋したっていいのか。不倫でなければ。
一つは、みっちゃんのお父さんの話。
みっちゃんが自分の店で離婚パーティ(?)を開いていると、突然停電になります。
みっちゃんのお父さんがチェーンソーで電柱を切り倒してしまったのです。お父さんは痴呆症です。
なぜそんなことをしたのかというと、昔貧しかった頃、お金がなくなると電信柱を切り倒して電線と薪に分けて売りさばいていたのです。
そのお金でたくさん食料を買ってくると、子供たちが歓声をあげます。お父さんは誇らしげです。
お父さんにとってはそれが幸せな記憶なのです。電信柱を切り倒してその記憶の頃を生きているのでしょう。なんだか切ないですが。
もう一つはコミカルなエピソードです。
パーマネント野ばらでいつものようにおばちゃんたちがおしゃべりしていると、一人が「最近胸が苦しい。動悸がする」と言います。
誰かが「更年期障害だね」と言いますが、なおこの母(だったと思う)は「それは恋だ」と言います。
確かに、その女性には好きな人がいました。みんなの助言に従い「すぐに寝ない」と言い、女性らしい格好をして(頭はパンチだけど)デートします。
なおこと店の常連たち心配半分、興味半分でデートの様子を遠巻きに見ています。女性が自転車を走らせ、荷台に男性が乗っているのを見て「逆やろ」とか突っ込みながら(^q^)
で、結局そのまま女性は相手をホテルに「はたき込み」です。「すぐ寝ない」とか言ってたのに!
その様子がコミカルに描いていて笑えます。体格のいいパンチパーマの女性に痩せた男性というのもまた可笑しい。
カシマとなおこ
この映画にはラストにどんでん返しがあります。ネタバレになるので、ご注意下さいね。
なおこは中学校の教師カシマ(江口洋介)と密かに付き合っています。
学校にカシマを訪ねに行ったり、トンネルではしゃいだりするシーンは素敵だなぁ、と思って見ていました。
ある時二人は温泉に旅行に行きます。でも、なおこが旅館で目覚めるとカシマがいません。
なおこは公衆電話で泣きながら「なんでこんなに寂しいの」とカシマに訴えます。
このシーンが本当に悲しいです。こういう時、菅野美穂さんの演技力すごいなぁ、と思います。
『パーマネント野ばら』のラスト結末
なおこは友人のともちゃんに「実はカシマと付き合ってる」と打ち明けますが、ともちゃんは困ったような顔をして「それ、もう聞いたよ。何回も。なおちゃんは忘れっぽいなぁ」と言います。
「言った?いつ言ったんだろう」と言うなおこ。
なおこは海岸でカシマと会います。「一緒に暮らそう」とカシマに言われて喜ぶなおこですが、そこにみっちゃんがおいしいお酒があると言って近づいてきます。
みっちゃんは「デートか」と言います。
あれ?周りを見渡すなおこ。カシマはいません。
だって、カシマはもう死んでいるのですから。
「みっちゃん、私狂ってる?」と聞くなおこに、みっちゃんは
「それならこの町の女はみんな狂ってる。私たち、世間好みの女をずっとやってきたんだもの。これからは好きにさせてもらおうよ」と言います。
なおこのことを否定したりしません。変に慰めるようなことも言いません。
みっちゃんはそのままパーマネント野ばらに行き、なおこは?と聞くまさ子に「海岸でデートしてた」と言い、続けて「大丈夫」と言います。
みんな、知っているのです。なおこがカシマとの過去に生きていることを。
でも、余計なことを言わず見守っています。強烈な個性の人たちばかりだけど、実はすごく細やかな気配りなんです。
原作と違うカシマ
原作と映画では、カシマの描き方が違います。原作では温泉に行ったりしませんし、中学校の教師という設定もありません。
そもそもカシマという名前も出てこなくて「あなた」という呼びかけだったと思います。うろ覚えですみません^^;
原作では若いなおこに対し、カシマはちょっとおじさんで、二人のシーンは淡いトーンで描かれ、なんだか物悲しいです。
「不倫なのかな?そうでなくても叶わぬ恋をしている二人なのかな」というイメージを与える描き方で、最後まで「死んでいる」という設定はなかったと思います。
ただ、海岸でデートしていてみっちゃんがやってくる、カシマはそこにいない、というシーンは同じです。
カシマは「死んだかどうかわからないけどそこにはいない人。なおこはカシマとの過去に生きている」という描き方で、それまでの二人のシーンで漂っていた物悲しさが腑に落ちます。
映画でははっきりと「カシマは実は死んでいた」というどんでん返しが描かれるのに対し、原作では「なるほど、二人のシーンは幻想だったのね、納得」という感じなのです。
まとめ
大好きな映画の一つになりました。豪快で繊細、強烈なのにほのぼのしてる。
笑えるけど号泣。すごい映画だなぁ、と。オススメです(^^)
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