映画『ヘルタースケルター』の原作、岡崎京子の代表作の一つである同名漫画です。
原作は未完で続きがあるという見方もあります。
原作のラスト・結末をご紹介した上で本当に未完なのか続きがあるのかなど考察します。
また、あらすじもご紹介の上記事の性質上ネタバレを含みますので、原作を未読の方はご注意下さい。
目次
『ヘルタースケルター』の原作
岡崎京子の同名漫画『ヘルタースケルター』が原作です。
祥伝社の「FEEL YOUNG」に1995年7月号~1996年4月号に掲載されました。
この漫画の連載終了直後の1996年5月、作者の岡崎京子は飲酒運転の車にはねられ意識不明の重体となりました。
一命はとりとめたものの、その後現在まで休筆中です。
漫画『ヘルタースケルター』あらすじ
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人気モデルのりりこは誰もが羨む美貌とスタイルでトップスターです。
恋人は大企業の御曹司で、華やかな生活。
しかしそれは虚像であり、全身整形で作り上げられたものでした。
恋人には愛されているものの、彼には婚約者がいます。
社会的には成功しているように見えるりりこですが、やがてその虚像が崩壊し始めます。
整形手術は違法な方法で行っており、そのクリニックはいくつもの事件を引き起こします。
事件を追う刑事麻田はりりこにもたどり着きます。
所属する事務所では生まれながらの美貌に恵まれた新人モデル、こずえが売れ始めていました。
りりこは次第に蝕まれ、窮地に追いやられます。
漫画『ヘルタースケルター』のラスト・結末をネタバレありで解説
私の理解が遅いだけかもしれませんが^^;
でも、本当は一番始めに素直に読んだ時の感想が、この作品の与えるメッセージそのものなのかな、と思います。
それは本当に単純で、一人の女性が幸せをつかもうともがいている、人よりきれいになれただけに苦しんで、優しくもなれず野蛮で下品で、その様子がまさにヘルタースケルター、しっちゃかめっちゃか、というものです。
この作品が人気があるのは、りりこが美しくなったのに上手くいかない、常に行き詰まって出口なしの中もがき苦しんでいる様子を妖しくスリルを持って描いているからだと思います。
ここから先はネタバレを含むのでご注意下さい。
ラスト・結末
りりこは新人マネージャー羽田をこき使い、顔に水を吹きかけたりひどい扱いをします。
それでも羽田がりりこの言うままになるのは、モデルとマネージャーという関係性だけではなく、りりこが魅力的だからです。
しかも、りりこは羽田の恋人と3人で性的な関係を持ちますが、それもりりこの意のままになっているのです。
なんでも誰でも自分の意のままになる。
だからこそ物足りない。いつまでも満たされない。
そこに、麻田という刑事が現れます。
麻田は、りりこが通う整形クリニックを調査していました。
クリニックは違法な整形手術をし、メンテナンスの副作用に苦しむ女性たちが自殺をしたりクリニックを訴えたりして事件になっていました。
りりこも患者の一人なので近づいてきたのです。
しかも、個人的にりりこを興味深く思っています。
この麻田とりりこの関係が面白いです。
麻田はりりこをタイガー・リリィと呼びます。
タイガー・リリィとは、ピーターパンに登場するインディアンの酋長の娘です。
脅されても怯まない度胸のあるタイガー・リリィをりりこに重ねてそう読んでいます。
りりこは麻田にとって、現代の芸能界でたくましく生きるタイガー・リリィなのでしょう。
クリニックの事件の被害者が多くなるのと並行して、りりこは体も精神も崩れていきます。
徐々に仕事がなくなっていき、休みができても今まで暇な時間がなかったりりこは休日の過ごし方など知らず、余計に荒れていきます。
一方、事務所には生まれながらの美貌に恵まれた吉川こずえという15歳のモデルが現れ、またたく間に売れていきます。
ガツガツしたところがなく、スタッフの受けもよいこずえはりりこと正反対です。
社長に「きれいな服がきれて雑誌やテレビに出て、みんなが自分を知ってるのってうれしい?」と聞かれたこずえの応えが印象的です。
「別に…なんでもどうでもいいです。
有名になるとかお金とかも別に…。
でも別に他にやることもないし、できないし…。
服も好きだけど…そんな…別に…。
いつかみんなあたしのことわすれちゃってもいいです。
20年10年ううん5年たったら、きっとあたしのことなんてみんな忘れてる。
むしろそのことのほうがたのしみです」
冷静とか覚めているとか言うこともできますが、なんというか、常にフラットなんです。
上に行こうとしているわけでもなく、ただできることをやっているだけ。その結果売れて、喜んでいるのはむしろ周りのほう、っていう。私はこずえのこのキャラが好きです。
ちなみに、こずえは同じく岡崎京子の作品『リバーズ・エッジ』にも登場します。
漫画の中で「調理実習でクッキーを焼いてきました」というシーンがありますが、やはり「リバーズ・エッジ」にも調理実習でクッキーを焼くシーンがあり、ファンは「あのクッキーは事務所に持っていったんだな」とニヤリとしてしまいます。
麻田はりりこに近づき、クリニックのこと、りりこの過去を知っているといいます。
りりこは元は太っていてきれいでもありませんでした。
怪しけな風俗で働いていたところを事務所の所長に拾われ、全身を整形されてトップスターになったのです。
その過去が書かれた資料を麻田はりりこの家に置いていき、後に羽田が見つけます。
羽田は事務所をクビになっていましたがりりこから離れられずにいました。
でも、どうにか状況を変えたいと思っていたところ、麻田が置いていった資料を見つけ、りりこの過去を知ります。
羽田はりりこの過去をマスコミにリークし、大変な騒ぎになりました。
麻田は警察の中で異動になりました。事実上の更迭です。
麻田はりりこにシンパシーを感じています。
麻田の部下が言います「一度使ったジョーカーは二度と使えない。使った切り札は捨てられてしまうんですね」
「ぼくと彼女はいつも同じ役回りなんだよ」と麻田は返します。
りりこも同じように、麻田の不安に感応していました。
二人は妄想の中でお互いを「兄さん」「妹よ」と呼びます。
このように、時々りりこと麻田の脳内の会話が描かれます。
現実でない不思議な世界ですが、そこはいつも同じ部屋で一人がけのソファーがあり、人体模型図のような絵が描かれた壁掛けがあります。
そして、ついにクリニックの院長は捕まり、これまで整形手術を受けた患者たちはメンテナンスを受けられなくなりました。
りりこも崩れるところまで崩れていきました。
原作『ヘルタースケルター』は未完で続きがあるのか
りりこは記者会見を開き、騒動について話すことを求められます。
会見の場で銃で頭を撃ち抜いて自殺することを企みますが、そこでまた、麻田と実際にか脳内なのかわかりませんが会話をします。
麻田に「15分もたてば忘れられてしまう」と言われ、りりこは別の方法を選びました。
りりこはこずえと違って人々から忘れられるのが怖いのです。
ホテルの控室を血まみれにし、床に眼球一つ残して消えました。
りりこは伝説になりました。
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5年後のメキシコ、こずえは意に反して(?)変わらず人気のあるモデルで、撮影をしていました。変わったショーをする店があると聞き、行ってみるとそこにはフリークとして登場するりりこがいました。
タイガー・リリィの奇妙な冒険の旅が始まっていた。しかしそれはまた別の機会に
TO BE CONTINUED
という文章で締められています。
原作は完結している
この漫画は未完だと言う人がいます。
きっと最後の文章「TO BE CONTINUED」がそう思わせるのだと思いますが、
私は「冒険は続く」という意味のTO BE CONTINUEDだと思っていました。
個人的な解釈ではありますが原作は完結していると思います。
作者の岡崎京子が執筆できる状態ではないことから、その真相は明らかではないのですが、私はここで終わっていてほしいなぁ、と思うのです。
だって、最後のフリークショーのシーン。
そこは麻田とりりこが感応しあう精神世界の部屋と同じなんです。
一人がけのソファーと人体模型の壁掛け。
だから、吉川こずえもその世界に足を踏み入れた、または皆の脳内でりりこは生き続けた、という風にも受け取れます。
もちろん見たままに見世物小屋でフリークとしてたくましく復活していた、という解釈もできますし、きっとそう思う人も多いでしょう。
だから、このラストを読者に委ねる形でりりこは伝説になったまま終わって欲しい、と思うのです。
ちなみに、映画はストーリーは割りと原作に忠実であるのに、原作と大分印象が違います。
それは監督の味付けがかなり加わっていること、沢尻エリカ演じるりりこは少女性が強いことが大きいと思います。
漫画と映画の両方を見て比べてみると面白いですよ!
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ディズニーやジブリ作品も見られるのも魅力の一つ。