映画「蛇のひと」のあらすじ、感想(ネタバレ)、結末

蛇のひと

2010年にテレビで放送され、同年に1週間限定で劇場公開されたサスペンスドラマ。

ギャラクシー賞テレビ部門2010年3月度月間賞を受賞。

2009年3月に受賞の『第2回WOWOWシナリオ大賞』受賞作品を三好晶子脚本で映像化した。

あらすじ

ベテランの独身OL三辺陽子(永作博美)が出社すると、何やら社内が騒がしい。

部長の伊東(國村隼)が自殺し大騒ぎになっていた。
同僚の今西(西島秀俊)が会社の金1億円を横領して行方をくらました疑いがあると聞かされる。

会社の幹部や同僚から今西と親しい関係にあると誤解された三辺は今西を探すよう命じられ、同僚の田中(田中圭)と共に手掛かりの名刺から今西に関係のある人たちに会う。
保険勧誘員の柴田のりこ(ふせえり)は今西にふられて腹いせに今西の友人と結婚し、離婚。
学生時代の友人里中(勝村政信)は今西にはげまされ分不相応のマンションを購入し、妻(佐津川愛美)とぎくしゃくしている。
予備校講師原田(北村有起哉)は不倫関係が妻(奥貫薫)にバレて泥沼になったあげく、今西の提案で愛人と妻と3人で住むことになった。

彼らの話を聞いた三辺は、今西が人を口車に乗せて言葉で転がしていく能力があると知る。
「今西さんと関わった人って微妙に不幸になってるよね」と三辺は田中に語る。

会社に戻ると、自殺した部長の妻(石野真子)が、横領したのは夫だったと言い、謝罪し金を返しにきていた。
部長が死ぬ前、今西は部長の自宅を訪ね、横領を今西のせいにしようとしていた部長にその証拠を突き付け、問い詰めていた。
部長が仕事ができる今西に嫉妬していたことを告白すると、今西は部長を責めず、自分が生きているだけで不幸になる人がいるのは自分が悪いのだから、自分が横領犯として消える、という。
今西は部長の罪を被るつもりで行方をくらましていたことがわかる。

もう逃げる必要はないのだから、と最初とは別の目的で今西を探し始める三辺は、大阪にある今西の実家を訪れる。

そこで今西の幼馴染(板尾創路)に会い、幼少期の凄まじい過去を知る。

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感想(ネタバレ注意)

面白かった!

Amazonプライムビデオで無料で見られるというだけで、前情報なしになんとなく見てみました。

映画だと思ったのですが、元々デレビで放映されたものだったんですね。

放映後に映画館でも上映されたようですが、お金を払っても見る価値あると思います。

西島秀俊さん演じる今西を、永作博美さん演じる同僚の三辺の目を通して語られるのだけど、序盤で三辺が思い出す会社での今西は、仕事ができる会社のエースで皆に頼られ、慕われています。

でも、今西の失踪後に今西を知る人達と会うと、ちょっと違う姿が見えてきます。

人のために一生懸命なのだけど、三辺曰く「今西さんと関わった人って微妙に不幸になってるよね」というように、結果としてではあるけれど、人のために頑張ったようでその人のためになっていないような状況に導いている。

すごーく不幸になっているわけではないだけに、なんとなく心に引っかかりを作ったまま、見る人は目が離せなくなっていきます。うまいね!

横領によって暗い雰囲気があるのだけれど、三辺演じる永作博美さんと同僚の田中演じる田中圭さん(ややこしいな)の軽妙なやりとりが重たくならなくて見やすいです。

永作さんは全編出ているけれど、カメラアイの役目で主人公は西島秀俊さん演じる今西です。

だから、主張しすぎず、でも今西にうまく絡んでいく永作さんの演技がとってもいいです!

そして、西島秀俊さん、さすが。序盤では三辺の回想シーンで、社内で活躍する会社のエースを爽やかに演じ、だんだん違う顔を見せていくところ、すごいなぁ、と。

三辺は今西が犯人だという証拠も今西本人も見つけられないまま会社に戻ると、自殺した部長の妻が来ていて、会社の金を横領したのは部長だったとわかります。

部長が死ぬ前に今西が部長宅に行っていたことがわかるのだけど、その時の部長と今西のやりとりが泣かせます。

部長は今西が横領したように見せる書類を用意していて、今西は外部から調査をさせてその書類を証拠に部長を問い詰めると、部長は開き直って「俺はお前のそういうところがイヤなんだ」と言います。なんですと(●`ε´●)!

外部に調査させたのは、部長の対面を保つため、社内では公にならないように、という今西の気遣いなのだけど、部長としては悪人の自分にさえ気を使って用意周到なところが逆に相手のプライドをズタズタにする、と。

「俺はお前が入ってきた時からいつかはこうなるとわかっていた」と言います。

自分が今西に負けるから、そうなる前に潰そうとした、ということみたいです。能力が高い今西への嫉妬ですね。

それなのに、今西は「僕、横領犯として消えます」と言います。驚く部長に続けて「僕が何の気なしに生きているだけで追い詰められる人がいるって、僕が問題でしょ。どう考えても。それが実の兄や世話になった上司ならもうどうしようもないでしょ。僕が悪いんですよ。簡単に言えば贖罪です。兄にできなかった分、部長に」さらに続けて「僕には家族がいないし、人間関係といったら職場の人くらい。そこで世話になっている上司だったら一番大切でしょ。気色悪い話しますけど、兄が生きていたら部長くらいの年なんです」そう言って部長の前から去ります。

泣かせるじゃないか、今西…(;_;)

でも、結果として部長は自責の念に駆られて自殺します。

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会社の金を横領したのが今西ではないとわかり、三辺は「もう逃げる必要はない」と教えたくて、今西の実家がある大阪に行きます。

そこに今西はいないのだけど幼馴染(板尾創路)に会って、子供の頃の話を聞きます。その過去が壮絶。

義太夫の師匠の妾の子として育った今西は、弟子として他の弟子仲間と一緒に、師匠である父の家で暮らします。

家には腹違いの兄(正妻の息子)もいるのだけど、義太夫の才能は大したことはなくて、今西のほうができが良いので頭角を表します。会社での部長と今西の関係と同じですね。

兄に妬まれ、みんなからいじめられ、正妻にもイヤがらせをされ、つらい毎日の中唯一救われるのは小さい時に父から買ってもらった万華鏡を覗くこと。

「これで見ると何もかもきれいに見える」と言って、その時は穏やかな顔を見せます。まだ子供なのにね(;_;)

でも、今西が見ていない時に兄にその万華鏡を捨てられてしまい、心の支えを失った彼は義太夫の才能も平凡なものになっていき、父からも見放されます。

すると、自分の敵でなくなった兄は優しくなり、家での生活がうまくいくかと思われた頃、事件が起こります。

兄の初舞台の日、付き人として兄を世話していた今西は、兄をだまして自分が舞台に上がってしまうのです。

しかも、平凡になったと思われていた語り口ではなく見事な義太夫を見せ、共演の父も満足げです。

裏切られた兄は絶望して父や弟子仲間を皆殺しにし、刃物を持って立ち尽くすところに今西が妾の母と幼馴染を連れて現れます。殺された弟子仲間の死体を顔色一つ変えずに乗り越えて兄の元に向かう今西。

兄は今西に恨み言を残して自分も死んでしまいます。これも後の部長と今西と一緒。

それでも平然としている今西に、幼馴染が「お前のせいで人が死んでいるのに平気なのか」と詰め寄りますが、今西は平然と「大体予想通りや」と言い放つのです(゜o゜;

しかも、降り出した雪に見入って「ええなぁ、雪は。これで何もかもきれいになるわ」と。
今西が人を狂わせる能力を見せ、狂気に満ちたシーンですが名場面です。

蛇のひと

場面が現在に戻り、今西の幼馴染と三辺の会話が続くのだけど、この幼馴染の考察が深いです。

全部計算だったのか、と尋ねる三辺に「始めはそうだろう。でもそのうちそれ自体が楽しくなったのだろう」と言います。

「それ自体」とは「口車に乗せること。自分の口一つで人を思うように生かして殺す」ことだと言う。

「今西の家を恨んで潰したけれど、皮肉なことにそうさせたのは、濃い語りの血だったということだ」

この幼馴染の板尾さん、いいです。彼が話すとすごく物語に深みを持たせてくれますね。シーンに厚みが出るというか。

映画「空気人形」でもいい演技を見せていたし、いい役者さんだなぁ、と思います。

話を元に戻すと、三辺は今までの今西の行動を思い返して気が付きます。

今西が関わった人たちは、皆今西が放った言葉で自分の人生の方向を変えている、と。それが「口車に乗せる」なんですね。

そこではたと、今西は三辺の人生も変えようとしているのではないか、と思い婚約者の元に向かいます。

予感は的中して、今西は婚約者の実家で営む工場で働いていました。ようやく対面する三辺と今西。

今西が「自分は人を殺している。これからも殺すかもしれない」と言うと、三辺は「私が見張ってます。ずっと、見張ってます」と告白とも取れる言葉で連れ戻そうとします。

蛇のひと

今西は一瞬表情を緩めるものの、車に乗ると海に向かって猛スピードで走らせます。

海に落ちそうになる直前、今西はダッシュボードにある何かに気づきます。

それは三辺からの贈り物で、子供の頃捨てられてしまった万華鏡と同じものでした。

「これで見ると何もかもきれいに見える」と言って心の支えにしていたものが戻ってきたのです。

今西はこの万華鏡をなくしてから、人を口車に乗せる才能を開花させたけれど、自分の元に戻ってきました。

美しいものを取り戻した今西は思いとどまり、三辺はまた日常に戻りました。

余談ですが、今西の車は三辺曰く「今西さんぽくないなぁ」という真っ赤で派手なオープンカーです。万華鏡も同じ赤。

大人になった今西は、万華鏡と同じ存在を探してその車を手に入れたのかな、と想像しました。そう思うとなんだか切ないです。

蛇のひと

元の生活に戻った三辺は、今西が励まして漫画家を目指した島田(劇団ひとり)が賞を取ったことを知ります。

島田は自分の力で賞を取ったのかもしれないけれど、今西が励ましていなかったら、そのまま夢を諦めて会社員を続けていたかもしれない。

そうなんです、他の人たちだって同じなんですよ。今西によって「微妙に不幸になった人たち」だって、今西が口車に載せる前は「微妙に不幸」どころか「もっと不幸」だったのですから。

映画ではそんな説明はなく、私が勝手にそう思っているだけですが^^;

ラストでの三辺は明るい顔で口笛を吹いています。冒頭では残業していた三辺が会社で口笛を吹いて「夜に口笛を吹くと蛇が出るぞ」と今西に言われます。

蛇は「じゃ」と読みますよね。「邪悪のじゃ、だから夜に口笛吹くと邪悪なものがくる」と、今西の幼少期に兄に言われるシーンもあります。

蛇=邪悪なものは今西の口車に乗せる才能、悪い方向に導く力なのかもしれません。それがタイトルの「蛇のひと」なのでしょう。

でも、ラストシーンの三辺は口笛を吹きながら夜道を歩き、今西に贈った万華鏡と同じもので街灯を覗いて笑顔になります。

きっと美しい世界が見えたのでしょうね。

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